* この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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chapter1 ~ Distorted 歪 ~
page 06

その日の授業が終わり下校を知らせるチャイムが鳴る。


キリトはケイを避けるように足早に昇降口までおりて靴を履き替えた時、地面を叩きつけるような激しい雨が降り始めた。傘を持っていなかったキリトは、小さくため息をつく。今日はつくづくツイていない。


 「キリトくん、傘持っていないなら一緒に帰ろう」

遠慮がちに話掛けられた声の相手が誰かはすぐに分かった。鞄が雨に濡れないように体の前に抱え込むようにして、激しい雨が降る中へ走り出す。


しばらくずぶ濡れになりながら走っていた足は次第にスピードが落ちていき、いつの間にか歩きへと変わっていた。

どこからか歌が聞こえる…キリトは足を止めた。


透き通るような歌声はポケットから聞こえてきていた。
 

RAINY - T-SEN / 真咲ゆとり
00:00 / 00:00

雨の音だけを ずっと

しとしと 聞いてるの

さよならも いえないまま

ひとりきり いまも しと しと

 

去りゆくひとたちを

想えば せつなく響くけど

透明な世界 見せてくれる

いまここに たしか にあるよ

覚めない 夢の続き

 

 

空の涙かな いまも

しとしと 聞こえてる

なにもかも 洗い流す

美しい 雫 しと しと

 

ひとりきりだって

確かに ここで息をしてる

苦しくない 悲しみもない

憂鬱もないよ

必要ないものは

もうさよなら

浄化してくれるの

 

 

 

雨の音だけが

ずっと しとしと 響いてる

さよならは 言わなくていい

ひとりでいい

いまも しと しと

 

去りゆくひとたちは

忘れよう もう別の道だよ

透き通る 生まれ変わる

れのない 世界へ急ごう

 「ケイが好きだっていたアヤネさんの歌だ…なんで突然再生されたんだろ…」

キリトは携帯電話の画面を見たまま、再び自宅へと歩き始めた。

自宅のマンションが見えてきた時、トラックがキリトのそばを勢いよく走り去り、泥水をはね飛ばしてキリトのシャツに赤黒い染みを作った。

 「くそっ、今日はやな事ばかりだ…」


玄関の扉を開けるとそのまま浴室に向かい、汚れたシャツを洗濯機に脱ぎるてるように放り込むと、そばに掛けてあったバスタオルを無造作に取った。
濡れた頭をバスタオルで拭きながらテレビを観ていると、女性のストーカー被害のニュースが流れていた。
被害女性の名は『城咲 彩音』とテロップに書かれているのを見て、キリトの鼓動が音を立てる。

 「城咲 彩音って… アヤネさん!?」

ニュースでは、『城咲 彩音』は最近話題のシンガーとしてSNSでも注目を集めていたが、一人の男性ファンが自宅まで何度も押しかけ問題になっていると言う事だった。
ケイがファンだということもあってか、少し気になって『城咲 彩音』についてインターネットを使い色々と検索してみた。


彩音の母親は、イスラエル人だと言うことがウィキソースと言うネット百科事典に書かれてあった。キリトの母親も同じイスラエル人であっため、母親の事を思い出していた。


キリトはアイドルや芸能人に対してあまり興味は無かったのだが、彩音に心が魅かれたのは母親と同じ国の人間で、何となく雰囲気も似ていたからかもしれない。