* この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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chapter1 ~ Distorted 歪 ~
page 05

授業と授業の間の休憩を告げるチャイムの音が鳴ると、再び教室が生徒たちの話声で充満する。

パブロフが犬を使った実験により『神経反射』となずけられた反応だ、現代では条件反射と呼ばれている。

キリトはケイに事情を訊こうと席を立ち上がるとケイが先に話しかけてきた。

  「キリトくん、一緒にトイレに行かない?」

 「うん、良いけどケイに訊きたいことがあるんだ」

 「え何?僕にわかる事なら答えるよ、でもとりあえずトイレに行こ!」

ケイは授業の前にあんな事があったにも関わらず、相変わらずの楽天ぶりにキリトが気にかけていた事も大したことではないなと思い始めていた。

トイレで用を済ませ、ケイに気になっていた事を訊こうとしたその時、平戸と友人らしき男子生徒がトイレに入ってきた。

 「よお、お前ら、良い所で合ったな」 

平戸がキリト達を睨みつける。

キリトとケイは何も言えずに、呆然と立ち尽くしているのを見て、平戸の友人が嘲笑する。

キリトは、気を取り直して毅然とした態度で平戸に言う。

 「僕達になんか用?」

 「あ?お前さ、態度がでけーんだよ!」

そう言うと、平戸はいきなりキリトの胸倉をつかみ上げた。

 「なにすんだよ!」

平戸はキリトを睨みつけたまま詰め寄った時に、ケイがたまらずに外へ逃げ走って行った。平戸の友人が思わず笑い出しながら言う。

 「アハハ!あいつ一人で逃げて行ったよ」

平戸の友人が馬鹿にしたようにあざ笑う中、平戸は表情を変えずキリトを睨みつけていた。


 「離せよ、僕が何したって言うんだよ!」

 「お前はオレの邪魔をした、オレの邪魔する奴は許さねえ」

平戸は、キリトを掴んでいる反対の手の拳を固く握った時、胸のポケットの携帯電話の着信音が鳴る。

 「チッ、うぜーな」

無視しようとするが、一向に鳴りやまない。

 「何だよ、なんで切れねーの?」

平戸は通常数回の着信で留守電になるように設定していたが、なぜか鳴りやまない着信音にしびれを切らし、キリトを掴んでいた手を放す。

乱暴に携帯電話をポケットから取り出し画面を見た。平戸の表情が少し曇ったのにキリトが気が付いた。

 「ちょっと待ってろ」

そう言うと、外に出て行った。トイレの入口で何か話していたが慌てた様子で何処かへ行ってしまった。

平戸の仲間達が面食らったように呟く。

 「なんだよあいつ…」

壁に寄りかかるようにして、全身に張り詰めていた神経の緊張が解かれたように、呆然としているキリトを尻目に、平戸の友人はトイレから出て行きざまにキリトに言葉を投げた。

 「また遊ぼうぜ」

キリトはそんな言葉を無視して、掴まれたシャツの皺を伸ばしながらトイレから出た。

 「そろそろ教室に戻らないと…」

平戸の事が気にかかったが、教室に戻るとそこに平戸の姿はなかった。
ケイが心配そうにこちらを見たが、キリトは顔を背けそのまま席に座った。

授業が始まると、いつもの光景がいつもの時間どうりに流れてゆく。
ローマ帝国の衰亡について、淡々と説明をする教師の声に耳を傾けながらも、一方で、キリトは平戸との一件の事を思い起こしていた。