* この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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chapter2 ~Siren 魅惑の歌声~
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ヨハネはトオルに質問の回答が出尽くされた事を確認すると、急ぐように研究所を出て行く。トオルは研究所のエントランスに待たせてある送迎車までヨハネを見送った後、数名の研究者にもう一度会議室に集まって欲しいと促した。

 

ヨハネを乗せた送迎車が郊外を抜け、空港へ向かう途中で携帯電話の着信音が鳴る。

 

「Ja, Hallo?(もしもし?)」

 

「Hier ist Isabella.  Können wir jetzt sprechen?(イザベラです、今よろしいですか?)」

 

ドイツからの衛星電話で、その声の女性はイザベラ・エーレンフリートという名のドイツ首相の秘書官だ。帰国したらその足で連邦首相府まで来て欲しいとの事だった。

ヨハネはベルリンへ行くのは帰国した翌日になると伝えると、イザベラが不服そうに言った。

 

「首相がすぐに会いたいと言っているのよ」

 

「先にやらねばならんことがある」

 

「予定を変更できないの?どうしても無理?」

 

「他国の顔色を伺うことしかできない政府に、人類の未来は任せられんと言ってやれ」

 

電話を切ると、信号待ちのためにゆっくりと車が停車した。ヨハネが後部座席の窓から外の景色に目をやると、交差点を横切る親子に目が留まる。母親と手を繋ぎ嬉しそうに話掛ける少年の姿を眺めていた。





 

トオルは会議室の電子ボードを背にして座り説明をしていた。

 

「現在諸君に注力して貰っている『遠隔視野技術 Remote Vision Technology 通称RVT』の開発についてだが、90%以上の進捗状況である事は確認しているが、完成をできるだけ急いで貰いたい。

WHOの衛星ネットワークとRVTを用い、地球上に存在する監視カメラや、カメラ機能を持った電子機器の映像とリンクさせ、人間の視界映像に変換し直接脳に投影する”Visual cortex EYE”テクノロジーと併用すれば、遠く離れた地での監視も容易になり、先日起きた問題を「スイソウノ脳≒」と現実との両面から調査が可能になる。」

 

一通り説明をすると、顎を指で挟むようにつまんだ。トオルが真剣に物事を考えるときに無意識にしている癖で、顎を触ると不思議と考え事に集中できた。


 

じっと一点を見つめ、考え込むようにして黙った後小さく一言呟いた。



 

「バチカンか… これは厄介な事になるかもしれんな…」





 

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