Chapter 3 ~ Immunda Animus 不浄の魂 ~
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「キリト、VRに来てくれる?」

 

「うん、良いけど…」

 

キリトは何時もより少しシリアスなリリスの口調が気になったが、VRゴーグルを装着した。

 

いつ見ても不思議な感覚を覚えるなと思いながら、リリスの姿を探した。

後ろから肩をチョイチョイと突く感覚を覚え、振り向くとリリスが悪戯に笑っていた。

その表情はどこか不安そうだった。


 

「感覚フィードバックの感度も問題なさそうね」

 

「感覚フィードバック?」


 

「VRデバイスから全身に電気信号を送っていて、VRでの感覚が実際の体にフィードバックされるの」

 

「へぇ、凄いね! VRで触った感覚が実際に感じられるって事?」

 

「うん、でも気をつけてね、大きな衝撃はかなりのショックを受けてしまうから…」

 

「わかった、気を付けるよ」

 

キリトがそう返事をすると、リリスはこっちへ来いと言う仕草をした。

 

「どこへ行くの?」

 

リリスは先日のストーカーの家の前までキリトを連れてきた。

「ここは…?」

 

そう言居かけた時に家からストーカーが出てきた、この前見た時とは別人と思えるぐらい顔付きも明るく、楽しそうに4歳ぐらいの男の子を抱えあげてはしゃいでいた。

 

「あれ?この前の…」

「そう。彩音さんにしつこく付きまとってた人」

 

「VRの中のキャラクターなの?」

「ううん。このVRは実験プログラムなの。「スイソウノ脳≒」という名前の実験プログラム」

 

「スイソウノ脳≒…」

 

「現実とまったく同じなの、建物も人も。

そこに生活している人の行動もほぼ同じ。

現実社会で生活している人達の行動パターンや、癖や嗜好などの情報も常にアッデートしていて、このスイソウノ脳≒の社会をつくっているの。

 

「へぇ、凄いや!じゃあここに居る人たちは皆、現実と同じなんだ」

 

「そう、まったく同じ平行世界。違うのは私たちAIが独立して存在しているか居ないかだけ…」

 

キリトはふと、このスイソウノ脳≒に存在する自分に興味が沸いたが、AIデバイスを頭にかぶり、独り言をぶつぶつと言っている自分の姿を想像して考えるのをやめた。

 

「この中にリリス以外のAIが他にも居るの?」

 

「うん、私のような アシスタントが目的に開発されたAIの他に、作業をするために開発された co-aiと呼ばれるAIも存在するの」

 

co-aiは人のような振る舞いはしないの、機械的に目的を処理するAI。

 

「このスイソウノ脳≒って何のためにつくられたの?」

 

「スイソウノ脳≒は人類を救済するためにつくられたの」

 

「人類の救済って… どういうこと!?」

 

「ちょっとまってね」

 

「problem arises キサラギ アヤネ、replay」

 

リリスがそういうと、VR空間がブラックアウトしたかと思うと、アヤネとアヤネを付け回していた記者だけがVRに現れた。

それはまるで舞台でスポットライトを浴び演劇をしているのを観ているようだった。

 

「これは!?…」

 

「スイソウノ脳≒では現実の人たちの日常の行動を、全て再現して記録しているの。

詳しく説明すると、仮想現実空間”スイソウノ脳≒”に現実社会を模倣した世界を創って、人間の生活する姿を何処からでも見られるようにして、人と人がどういう風につながりを持って生活しているかを見られるようにしているのね。

 

「人間関係を観察するって事?」

 

「そう、人と人の関係性って良い場合もあるけど、悪くなる場合も多いよね。

生まれた時から負の感情を持ってる人って居ないでしょ、成長していくうちにだんだんと、他人に対する嫉妬や憎悪と言ったネガティブな感情がだんだん膨らんで行き、犯罪やテロや時には戦争にまで発展しまう…」

 

キリトはこの前の啓との出来事を思い出していた。

確かに啓に対して負の感情を抱いたことに間違いは無かった。

 

「このままだと人類は自分達の手で絶滅への扉を開いてしまうことになる…」

 

「人間が絶滅!?」

 

「そう、人間の負の感情の増幅、悪い感情…悪意って言うほうがわかりやすいね。

この”スイソウノ脳≒”が開発開発された理由は、人間の負の感情、悪意を意識下から取り除く為のプログラム。人が抱く悪意の根本原因、逸脱した感情の発生原因を特定し、co-aiがその人間が正常な行動をとる様に誘導して、意識の正常化を行うの。

そうやって人間社会全体が争いの無い、平和な理想社会の形成が可能になるはずなの。


 

「争いの無い平和な社会・・ すごい!すごいね!」

キリトは興奮して、ついつい声が大きくなった。


 

「キリト、この前のバチカンでの出来事覚えてる?」

 

「男の人が切られた・・テンプル騎士団だったよね」

 

「もう一度サンピエトロ広場に行こう」

 

「あそこで何かあるの?」

 

「ちょっと気になることがあるの…」

* この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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