* この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

スイソウノ脳≒ (1).png
LOGO Experiments Art Music.jpg
chapter1 ~ Distorted 歪 ~
page 02

自分の家以外の個人の部屋へ入るのは何年ぶりだろう…


キリトは人付き合いが得意ではなく、友人と呼ばれる関係を作ることもあまり無いので他人の家に呼ばれることは少なかった。

ケイの自宅は良くある一戸建てで、周りには大きな建物がなく家々に植えられた庭木以外に頭上を遮るものがなく、空が広く感じられた。

 「さ、上がって、上がって」

 「うん、お邪魔します」

玄関を入るとケイの母親が廊下の突き当りの部屋から顔を出す。
キッチンで夕飯の支度をしていたのか、エプロン姿で手をタオルで拭きながら笑顔で出迎えた。

 「あら、お友達?」

 「うん、神代キリトくんだよ、同じクラスの」

 「こんにちはキリト君、ゆっくりしていってね」

 「こんにちは!お邪魔します」

キリトは少し緊張して軽くお辞儀をすると、ケイが急かすように二階に連れてゆく。
ケイの自室はスッキリと整頓されており、壁の一面に取り付けられた収納棚にズラリと並べられたゲームソフトやCD、漫画がある一定の法則で並べられており、ケイの几帳面さが見て伺える。

 「凄いね…、こんなに持ってるんだ」

 「うん、まだ開けてないゲームもあるんだ… よし、セットアップ完了!これ付けてみて」

 「へー、これがVRデバイスかぁ」

VRデバイスと呼ばれる、仮想現実空間を映し出すゴーグル型のディスプレイをキリトに渡す。
キリトはネットやTVなどで見て知ってはいたが、実物をさわるのは初めてだった。
好奇心という欲を満たすかように、概観をなめるように見てから装着した。

 「うわ!すごい!」

思わず叫び声を上げる。VRゴーグルから覗く景色は本当に目の前に広がる世界のようで、それはまさにゲーム画面の中に入り込んだような感覚だった。

現実には存在しないはずの建造物が目前に聳え 、見たことも無い生物が手で触れられそうな傍まで来て何かを訴えている。
仮想現実と呼ばれるVRの映像を初めて目の当たりにして、言葉を失いながら見とれていた。

キリトがVRに心を奪われているのを見て、ケイは嬉しそうに話しかける。

 「VRって凄いだろ、ゲームの中に入って色んな事が出来るんだ」

そんなケイの言葉も半ば届かず、キリトはVRの世界に引きずり込まれて居た。

 「VRをネットワークで繋げば、一緒に冒険とかのゲームもできるんだよ」

VR空間に飲み込まれそうになっているキリトを現実に引き戻すようにケイが話しかけると、漸くハッとしたようにキリトがVRゴーグルを外した。

 「こんなに凄いと思わなかった… VRデバイスを買えば、ケイと一緒に冒険出来るの?」

 「うん!確かネットの通販サイトに在庫があったはず…ちょっと待って」

携帯電話を取り出し、オンラインショップを検索すると、直ぐにこれだと呟いてキリトに携帯電話の画面を見せる。

 「これだよ!まだ在庫あるみたいだね」

 「へー、これがVRかぁ… でも、けっこうな金額だね…」

 「これでもだいぶ安くなったんだよ、昔のモデルは視界も狭くて水中眼鏡つけてるみたいな感じだったのに、数倍の値段してたからね」

 「そうなんだ… 技術の進化って早いよね、AIとかの研究も進んでて凄く便利になってるし」

 「キリト君、AIにも興味あるんだ?」

 「うん、なんか人工知能って不思議な感じするんだよね… 少し怖い気もするけど面白そうだなって思う」

 「確かに面白そうだよね。そうだ!今月号の”アルベルト”に最新技術の記事が乗ってたっけ…」

 「アルベルト… アインシュタインの事?」

 「雑誌の名前なんだけど、エレクトロニクスとかの最新技術が紹介されてる電子雑誌なんだ、ちょっと見当たらないな… 後でメールにアドレス送っておくね」